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2006年7月5日

増える親子の「愛着障がい」
ヘネシー・澄子先生(東京福祉大学名誉教授)の子育て研修会より

 4年ほど前から日本の親子の研究を実施されているヘネシー・澄子教授(東京福祉大学名誉教授)によると親子の関係がスムーズにいかない悩み相談が増えてきているとのこと。

 たとえば「ふたりの子どもがいるが、上の子と、どうも気があわない・・・」「子どもをだっこしたいと思わない・・・」「子どもがなぜか自分をさけているような気がする・・・」「知らない人にはなれなれしくするのに、同じ年の友だちができない・・・」「やたらうそをついたり、動物をいじめたりする・・・」「転んでけがをしても、私のところに泣きついてこない・・・」など。これらはいずれも親と子の愛着の絆が安定していない状態を示しているそうです。以下ヘネシー・澄子教授のお話です。

 アメリカのことわざでは、「人間は孤島ではない」というものがあります。私たち人間の誰もが、胎児として母親の胎内で育てられているときから、母子の肉体の絆を経験しているのです。そして生まれてきてから、母(またそのかわりになる世話人)と子どもの関わり合い方で、愛着関係がとても安定した状態から愛着関係が全く無い状態までのいずれかを体験しながら成長していきます。0歳から5歳までの間に、母と子の愛着関係が安定していない、またはなかった結果として起こる「反応性愛着障がい」は、まだ日本ではあまり知られていません。

 私が帰国していちばん驚いたのは、「抱き癖」という言葉がまだ当然のように使われていることです。赤ちゃんは抱かれることで安心感と満足感を味わい、世話をしてくれる人との愛着関係、信頼関係を結ぶのです。赤ちゃんのときにたくさんだっこされた子どもは、成長するにしたがって、安心して親元を離れ、独立していくことができます。昔の日本では、子どもを抱いたり背負ったりして家事をしていました。

 このように親とたくさんのスキンシップを経験した子どもは、巣立ちをした後人生の難問にぶつかったとき、自分を励ます「親の目」を背中に感じ、自信を持ってそれに挑戦していけるのです。親が子どもに与えるいちばんの財産は、お金や不動産でなく、自信を持って独立し、人生に立ち向かえる能力ではないでしょうか。安定した愛着関係は、子どもを一生幸福にする「鍵」であり、すべての親が子どもに与えることができるプレゼントなのです。今日本で問題になっている「引きこもり」や事件は、乳幼児期における愛着関係の障がいの現れではないでしょうか。

 この間、東京・群馬・長野・愛知・岐阜・大分県など多くの県で「里親の会」との協力を得て講演会や勉強会が実施されてます。また10月に来日され、全国での勉強会が実施される予定です。このネット上でも紹介していく予定です。ご期待ください。

(中嶋雄一研究員)

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