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トピックス 学校教育

2010年5月7日

文科省、画期的シンポ。国民参加型「熟議」による政策論議の新たな試み
~大学生から高齢者まで一般市民が輪になって、「どうする?小中学校」~

 季節外れの底冷えのする4月17日土曜の午後、虎ノ門・文部科学省の講堂は、役所に不似合いな約200名もの人々で、あふれかえっていた。大学生からご老人、スーツからトレーナー姿、女性も目立つ、身分や立場はわからないが、その雰囲気は、よくある中央省庁の会合とは全く様相が異なっていた。会場に入って戸惑った。まず椅子の並べかた。講演会スタイルではなく、13脚位ずつイスが円形に並べられ、9つのグループに分かれていた。自分の立ち位置がしばらく見つけられなかったのである。

 会合の名称は、「熟議」。正確には、「熟議に基づく教育政策形成シンポジウム」
 主催は、文部科学省である。NPOで知り合いの学生さんから誘われ、1週間ほど前に急遽申込んだ。さて、会場では、ようやく自分が第9グループとわかり、椅子取りゲームのような席のひとつにすわらせてもらう。取材陣も多く、各グループにはビデオカメラもセットされ、周囲は傍聴席になっており、注目される参加者ではあった。

 13時開始。テーマは、「小・中学校をよりよくするにはどうすればよいか」というお題。最初に、鈴木寛副大臣から、挨拶。次に「わが国の初等中等教育の状況」についての説明が超スピードでされる。「わが国の子どもの状況」「学校・教員の状況」「家庭の状況」「文部科学省の政策」。

熟議資料http://jukugi.mext.go.jp/library_jukugi_file?p=1

 グループ討議が始まった。私のグループのファシリテータ(司会)は、なんと、文科省の局長さん。「このグループは、“中学校をどうよくしたらよいか”がテーマです」と。口火は、ひとりずつ自己紹介。自分の中学時代をカミングアウトしたり、子供の中学時代の様子などを話すなどして1時間。後半は、緊張もほぐれたところで、討議に入ったのだが、「整列もできないゆとり教育世代」(60代大学教授)発言あたりから、「整列することに何の意味があるのか理解できない」(大学生)などと熱い討論が勃発。他にも続々議論が巻き起こる。詳細はおもしろいので他の機会に譲りここでは省略。

 最後に、各グループの代表が、数分でまとめをして終了。総括は、鈴木寛副大臣と金子郁容慶応大学教授。閉会した後も熱気は冷めやらず、多くの参加者が居残り、議論の続きをしたり、名刺交換したり、方々で談笑が続いていたのが印象的であった。

 まさに、文部科学省の門戸を開いた、天の岩戸をこじ開けたのは、神ならぬ「すずかん」こと鈴木寛副大臣である。これが政権交代の効果、政治主導という現実かとこの目で実感できた日であった。この歴史的試みが継続され、実を結ぶまで実行して欲しいもの。さらに、このスタイルは教育委員会や学校が主催になり地方でも応用し、伝播していって欲しい。また、文科省だけでなく、他省庁や企業でも応用が利く手法である。これぞ民主主義という、わかりやすく実感できるやり方もあることを証明してくれた。ひさびさに明るい気持ちで、虎ノ門を後にした。外は寒かったが、気持ちは暖かかった。

(つぶやきレポート:安威 誠 研究員)

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熟議カケアイ:http://jukugi.mext.go.jp/

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