そもそもなぜ理科なのに食品系のふろくがあったのか。それは6年生「カビ・キノコ」「消化のしくみ」、4年生「でんぷんの性質」の単元に関わるふろくから始まった。 64年から6年生「カビ・キノコ培養セット」で菌が立派な生物であることを確認、「呼吸・消化実験セット」で消化のしくみを理解した。4年生「食べ物実験セット」では、試験管とヨウ素液、自分で用意した食品を使ってでんぷんを調べた。
そして67年、食品系ふろくが登場する。6年生では培養するものをカビ・キノコからパン・甘酒に変更。酵母菌と麹菌でパンと甘酒を作りながら、食品の中での菌の役割を学び、それぞれの菌を少量残して実験も行った。4年生ではにがり、アミラーゼ、でんぷんからそれぞれ豆腐と水あめを作りおいしく食べたうえで、少量ずつ残しておいた材料にヨウ素液をたらして実験。この時点では「家族にもごちそうしよう」と表記。しかし68年、学研社内に安全審査室が設置されると社内チェックが厳しくなり、69年には「作った後はなるべく早く食べよう」の一文が追加された。
しかし、中にはせっかく作ったふろくを食べさせてもらえずがっかりした読者も大勢いたはずである。その発端は71年4年生の「水あめ・こんにゃく作りセット」。苦労して完成させたこんにゃくを、さあ食べよう!とした瞬間に母親から「食べちゃだめ!」と言われ、しぶしぶ捨てはしなかったろうか? 実は「おうちの方へ」欄に「お子さんたちには食べないようにとの呼びかけをお願いします」との一文が入っていたのだ。ふろく開発の際、口に入れるものには細心の注意がはらわれていた。もちろんこんにゃくも食べても大丈夫だったのだ。しかし、子どものやることだからトイレに行った後、手を洗わなかったかもしれない、危険なものを混ぜてしまうかもしれない。念には念を入れていたのである。それまで食べ物作りと実験を分けて行わせていたのが、以降、作った食べ物を使用して実験させるよう形態が変化する。
78年、「消化と吸収」単元と合わせ、出来上がった食品をたんぱく質消化酵素に入れて溶け方を調べる実験を追加。
「作ったパンは食べてはいけません。実験が終わったらすぐ捨てよう」と、残酷な注意書きが。この時期の子どもたちは苦心して作ったおいしそうな食品が試験管の中で溶けて小さくなっていく様を指をくわえて見ているしかなかったの だ。「実験なんてしなくていいや」と食べてしまった?それとも「せっかく作ったのにひどい!」と学研に電話した? 85年以降、食べる用の材料やクッキングページを用意するなど、子どもの「食べたい」要望に応える工夫がなされるようになる。
そんな騒ぎとは関係なく、80年の改訂で6年生「カビ・キノコ」4年生「でんぷんの性質」の単元が消え、これに関する実験はする必要がなくなった。以降、4年生は「もののとけかた」「氷」単元に合わせたチョコレートやアイスクリームを、6年生は味噌や中華まん等の発酵食品を、実験そっちのけでひたすら作って食べ続けたのであった。
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