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TOP > 研究員レポート> 夏休みの学校が“美術館”に変身!スクールアートプロジェクト「ムサビる!」 取材レポート
「ムサビる!」は、2009年に武蔵野美術大学(ムサビ)OBで中学校の美術教諭・未至磨(みしま)明弘先生が、子どもたちに「本物の美術に触れてもらいたい」と武蔵野美術大学の三澤一実教授に声をかけて始まったものです。多くの子どもたちにとって、縁遠い存在となった美術館をもっと身近なものとし、生の作品・本物の美術に触れる体験をしてもらうべく、子どもたちが一日の半分を過ごしている学校自体を美術館に変えてしまうという“中学校美術館化計画”プロジェクトです。
五回目を向かえる今回は8月3・4日の2日間にわたり、東京の郊外にある東大和市立第五中学校、第九小学校の2会場で開催されました。小・中学生から芸術系大学生、教授などの作品が校内に同時に展示された、「ムサビる!」を取材しました。
会場となった夏休みの静かな校舎の中は、それぞれ展示によってさまざまなアート空間を演出していました。活気があったのは、生徒と保護者が参加するワークショップを行う教室。ムサビ学生スタッフのサポートにより、子どもたちがホンモノの美術に自ら触れる楽しさを体感しているようでした。また、現役のムサビ学生の絵画ほか造形作品を展示してある教室は、それぞれ独特の個性あふれる演出がみられました。展示室によっては、創作した学生本人による解説もあり、若い芸術家の創作意図がわかり、作品の理解に役立ちました。そんな会場の中で、やはりちょっと違う、もっとも「美術館」らしさを感じたのが、キャリアのある芸術家である教授たちの展示室でした。机や椅子などをはずし何もない床に置かれた数点のオブジェのみ展示した教室。また室内いっぱいに並ぶ画架(イーゼル)上のカンバスにモノクロのドローイングとメッセージのプリントを展示した教室…と普段の教室とはまったくちがう、アートな異空間に「変身」していました。
最後に感心させられたのが、廊下や階段にある窓や棚、ちょっとしたスペースに飾れた、子どもたちや学生による造形物やラフスケッチ? メモなどの小物の数々…。「これは展示用の作品? それとも?夏休みの忘れ物?」と、展示教室をつなぐ空間にも、工夫した演出があったことに、心がなごみました。
ヨーロッパなどでは、歴史ある美術館でも、子どもたちをはじめ市民が気軽に訪れ、フツーの暮らしの中で芸術と身近に向き合っている、と聞きます。日本の一般美術館も、もっと身近(低料金で行列なし)に見学できれば、と感じるアートイベントでした。
(取材:主任研究員・松田豊一)
◆「ムサビる!」関連ウェブサイト 旅するムサビ公式サイト