TOP > 小学生白書Web版 > 2011年6月調査 > 分析編

小学生白書Web版

小学生白書Web版 2011年6月調査>分析編>

第3章 家庭状況別にみた東日本大震災発生時の下校の困難さ

(明治学院大学非常勤講師:渡辺恵)

はじめに

 東日本大震災(2011年3月11日発生)では、今回の調査対象地である首都圏でも震度5程度の強い揺れがあった。その結果、交通網や通信網に大きな混乱をもたらし、災害時における交通網や通信網のあり方、帰宅困難になった人たちへの対応などが改めて問われることになった。子どもに関していえば、発生時刻が下校時間の前後であったため、多くの子どもは学校にいるという状況であった。学校では、教師が保護者の下に子どもを帰すまで、安全にかつ安心して過ごせるよう、心を配り、適切な対応を取っていたと思われる。実際に、第1章で触れられていたように、多くの保護者は、学校の対応を適切なものと感じている。むろん、災害時における子どもへの対応には、課題も突きつけられたと思われる。それは、学校だけではなく、家庭でもそうであったろう。そして、家庭では、災害時にどのように対応するのか、意識的にかつ具体的に考えるきっかけになったのではないだろうか。本章では、震災当時における子どもの下校に関わる家庭の課題に着目していくことにする。具体的には、保護者が震災当日の子どもの下校をどのように捉えていたのかを明らかにし、災害時における子どもの下校に関わる困難さをどのように軽減できるのかを探ることにする。

 ところで、近年、小学生の子どもを持つ家庭では、就労している母親が増えてきている。厚生労働省の「国民生活基本調査」によると、18歳未満の子どもを持つ家庭で、末子の子ども年齢が7~8歳の家庭で母親が就労している割合は、2001年では58.8%であったのが、2009年には65.5%に上昇しており、9~11歳では2001年に63.4%が、2007年には72.0%まで増加している。このことを鑑みるならば、子どもの下校時に、普段から、保護者が在宅していない家庭もあると思われる。まして、災害時となれば、就労先からの帰宅が困難な状況になる保護者もでてこよう。今回の調査対象地域である東京都、埼玉県、神奈川県の1都2県でも小学生の子どもを持つ家庭では、共働きの家庭が多いと思われる。また、東日本大震災当日では、就労や所用により、子どもの下校時には、大人が誰も在宅していなかった家庭も少なからずあったと思われる。そうであるならば、震災時における子どもの下校をめぐる大変さやその課題は、当然ながら、保護者の就労状況や当日の保護者の在宅/不在宅等の家庭状況によって異なっていたと考えられる。そこで、家庭状況の多様さを踏まえ、家庭状況別に子どもの下校をめぐりどのような困難さが生じていたのかを検討していくことにする。また、今後の災害時に備え、事前の学校防災に対する認知度や災害時の行動に関する家庭での取り決めが、そうした困難さの軽減につながりうるのかどうかを探っていきたい。