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小学生白書Web版 2011年6月調査>分析編>

第3章 家庭状況別にみた東日本大震災発生時の下校の困難さ

(明治学院大学非常勤講師:渡辺恵)

2.子どもの下校に伴う困難さ
(2)「不在家庭」が抱えた困難さ

 では、どの家庭が、子どもの下校に関してどのような困難を抱えていたのであろうか。災害時における子どもの下校の大変さは保護者が家にいるかどうかによって異なることが先にわかったことである。この点を踏まえ、震災時における大人の在宅/不在宅に焦点をあて、保護者が抱えた困難点を探っていくことにしよう。図3-5は、震災時における保護者の在宅/不在宅別に、震災当日に、子どもの下校の大変さにつながる事柄がどの程度あったかを表したものである。

棒グラフ

図3-5.震災時の大人の在宅/不在別にみた、震災時に困難な状況が「あった」割合(%)

 その結果、「在宅家庭」と「不在家庭」とを比べて、最も差が大きい項目は「子どもをひとりにしてしまう時間があったこと」である。「在宅家庭」が14.6%に対して、「不在家庭」は倍以上の37.0%である。つまり、災害時には、保護者が不在の家庭ほど、子どもがひとりで過ごさなければならない状況になりやすいと言える。しかも、「あなたやあなたの配偶者のかわりに、子どもを見てくれる人をさがすのが困難だった」と回答する家庭も、「在宅家庭」が15.1%であるのに対して、「不在家庭」が27.3%と多い。突然に、子どもを預かってもらえるようお願いできる相手を見つけるのはかなり難しいことが窺える。

 また、「子どもがどこにいるのか分からなかった」や「子どもの状況について誰に相談したらよいのか分からなかった」と回答している「不在家庭」は4割前後になっており、「在宅家庭」よりも10ポイント強高くなっている。震災という非常時において、保護者にとって、もっとも気掛かりなことは子どもの所在であるが、「不在家庭」の場合、それを確認することが容易ではなかったことが窺える。この点に関して、「震災時における家庭での取り組み」に関する自由記述では、「不在家庭」の保護者から次のような回答が寄せられている。「家族は、それぞれ別の場所にいたが、携帯電話で、けっこう根気よく繋がるまで連絡を取り続けたこと。その結果、子供を近くの友達の家で預かってくれた」、「携帯がまったく使用できず、学校からのメールも受信できず、電話もかけられずで、最悪だった」というものである。こうしたことを踏まえるのであれば、大人が家を不在にすることが多い家庭では、災害時に、子どもとどのように連絡を取るのか、子どもがひとりのときにはどのように行動するのかなどを、子どもと一緒に決めておくことも、家庭におけるひとつの対応策なのではないだろうか。

 ところで、震災時における大人の在宅/不在宅に加え、下校方法の違いによって、保護者の困難さは異なるのだろうか(表3-3)。全体的にみて、「在宅家庭」でも「不在家庭」でも、「引き渡し」よりも「集団下校」の方がどの項目においても数値が高く、「集団下校」の場合には、保護者はより多くのことで困難を抱えることになっていたことがわかる。

表

表3-3.震災時の大人の在宅/不在別・下校方法別にみた、震災時に困難な状況が「あった」割合(%)

 子どもの下校に関してより大変さが生じやすい「不在家庭」に着目して、下校方法の違いと困難さとの関係を確認すると、次のような結果であった。「集団下校」の場合と「引き渡し」の場合の差が10ポイントを越える項目を示せば、「子どもをひとりにしてしまう時間があったこと」(その差は22.5ポイント)、「子どもがどこにいるのか分からなかった」(その差は16.0ポイント)、「子どもの状況について誰に相談したらよいのか分からなかった」(その差は11.4ポイント)である。なかでも、子どもがひとりになってしまった家庭や子どもがどこにいるのか分からなかった家庭は、「集団下校」の場合、半数近くにも上っている。ここで確認できることは、大人が家を不在にしている家庭では、災害時に子どもの下校方法が「集団下校」の場合、子どもが大人の下で「安全」に保護されるように対応することがより難しくなるということである。この点は、災害時における下校方法のあり方を見直す際の重要な課題となろう。