TOP > 小学生白書Web版 > 2011年6月調査 > 分析編

小学生白書Web版

小学生白書Web版 2011年6月調査>分析編>

第1章 東日本大震災発生時の下校の全体的な傾向とその後の変化

遠藤宏美(宮崎大学特任助教)

2.震災後の生き方の変化について
(2)子どもたちなりに取り組んだ支援活動

 東日本大震災の被害は、マスメディアを通じて首都圏にも伝えられてきた。テレビでは悲惨で生々しい映像と音声がリアルタイムで、新聞・雑誌では凄惨な被害の様子が大量の文字になって、私たちの目に飛び込んできた。大人たちの多くはこのような情報を目にし、耳にして、支援の手を次々に差し伸べたり、何かできることはないかと知恵を出し合ったりした。義捐金の募集は発災後まもなくあちこちで始まり、街頭や支援機関への振り込みによる募金にとどまらず、会社や地域、店頭での募金、電話回線を通じての募金など手段も多様に用意された。支援は募金だけではない。交通手段が制限されるなか、多くの人々がボランティアで被災地に集い、炊き出しや瓦礫の処理など直接的な支援を行った。津波などで家を失ったり避難してきたりした人々に部屋を貸し出す「震災ホームステイ」注7)などの支援が、民間のボランティアとして始まった。学校に関することでは、被災を免れた各地の教育委員会が教職員を被災地に派遣して授業や学校事務などの支援を行ったり、被災地の児童・生徒を受け入れたりした。これらのほかにも諸外国からさまざまな方法で支援の手が差し伸べられたことは、周知の通りである。

 では、子どもたちはどのような支援を行ったのであろうか。図1-7は、被災地や被災者への支援活動をしている子どもの割合を示したものである。「支援活動をしている(した)」子どもは28.8%と3割近くにのぼる。また、「検討中」の9.2%を含めると、約4割が支援活動をする意向があることがわかる。被災地や被災者への支援活動といっても、首都圏に住む小学生にとって、被災地にボランティアで出向くことは容易なことではないし、力も小さい。義捐金として募金したくても、手元に持っているお金は少ないと思われる。したがって、小学生ができる支援活動には限りがある。その中で約4割もの小学生が支援活動を行ったり、行いたいと希望していたりすることには注目するべきであろう。

図1-7 子どもによる被災地や被災者への支援活動の有無(N=927、単位:%)

 では、具体的にどのような支援活動を行ったのだろうか。ここでは先の質問で「(子どもが支援活動を)している/した」と回答した267名の自由記述の結果から見てみよう。表1-2は、子どもたちが行った支援活動について記述された回答を、筆者が数え上げてまとめたものである。それによると、子どもたちが行った支援活動で最も多かったのは「募金」であった。詳しく記載のあった回答から推測すると、コンビニエンスストア等の店頭の募金箱や、小学校・ボーイスカウト等の活動で募金を行った子が多いようである。当然のことながら大きな金額ではないようであるが、「毎月楽しみにしているコロコロコミックを買うのを我慢して募金した」、「お手伝いをしておこづかいを少しずつためて募金をおこなっていた」などと、誰かの財布からではなく、自分にできるやり方で自分にできる金額を募金した様子が窺えた。また、お金ではなく文房具やランドセルなどの物資を提供した子どもたちも4分の1程度見られた。子どもたちが必要とする「モノ」を子どもたちから提供するという支援は、きっと被災地の子どもたちを勇気づけたのではないだろうか。そして、小学生ならではだと思われる支援の仕方として「ベルマーク運動」があった。これは、日用品についているベルマークを切り取って集め、PTAを通じて「ベルマーク教育助成財団」に送ると1点1円の計算で協賛会社から資金援助がされる運動であり、多くの学校が参加しているため、子どもたちにはなじみ深い活動である注8)。なかでも、学校で貯めていたベルマークの点数分の金額を被災校に寄付する「友愛援助」の仕組みは阪神大震災(1995年)をきっかけに生まれたといわれており、東日本大震災においてもこの仕組みを利用した支援が広がっているという注9)。ベルマークの1枚1枚は小さな金額にしか換算されないが、マークは身近な日用品についているため、集めるとかなりの金額になる。身近であることに加え労力もあまりかからず、子どもたちが取り組むのに適した支援活動といえるだろう。

 金銭や物資の提供だけが支援ではない。手紙や千羽鶴などを被災地の学校や子どもたちに送ったり、被災地にいる知人に直接連絡を取り合って励ましたりするという、精神的な支援を行った子どもも少なくない。また、避難のため転校してきた子と仲良くすることも、子どもができる精一杯の支援であると同時に、転入生にとっては大きな、そして一生の心の支えになるかもしれない。その意味では非常に大きな支援であるといえよう。

 そのほか、節電に取り組んだり、被災地の物を買うように親に勧めたりといった行動や、風評被害について考えるなどの関心を持つということも、立派な支援活動である。大人に限らず子どもたちも、自分たちにできる範囲でできることをして、復興の手助けを行っていることが見て取れる。

表1-2 子どもたちが行った支援活動(N=267、複数回答)

  支援活動(カッコ内は自由記述回答があった延べ数)
募金・物資の提供 募金(215)
物資・文房具・衣類・ランドセルの提供(62)
ベルマーク運動・ペットボトルのキャップ集め(4)
励まし 手紙・千羽鶴・ビデオレター・メッセージ・絵(18)
知人に連絡・支援(7)
避難してきた人との交流(4)
その他 節電(13)
被災地の物を買う(6)
チャリティーイベントの開催・参加(4)
被災地へ行って手伝ったり見舞ったりした(3)
風評被害について考える(1)
買占めをしない(1)
注7)
「震災ホームステイ」とは、無償で提供された空き部屋や空き家を、入居を希望する被災者に橋渡しするマッチングサイトで、株式会社第一総合研究所が2011年3月19日に開設した。大震災発生後約半年を経た2011年9月30日現在、空き部屋・空き家の提供受付は1,567件、入居希望受付は614件あり、マッチングが決定したのは190組591人にのぼっている(震災ホームステイ http://www.shinsai-homestay.jp/ 2011年10月24日接続確認)。
注8)
ベルマーク教育助成財団によると、参加校は28,400校(PTAでは926万世帯)を超えているという(ベルマーク教育助成財団 http://www.bellmark.or.jp/index.html 2011年10月19日接続確認)。
注9)
「被災校支えるベルマーク 各地の学校・企業・個人に広まる」朝日新聞(朝刊)2011年9月22日付