J.D.

左:(株) TOKYO GLOBAL GATEWAY 教育サービス部 ESマネジメント室リーダー

S.T.

中央:(株)TOKYO GLOBAL GATEWAY 常務取締役

K.B.

右:(株) TOKYO GLOBAL GATEWAY 教育サービス部 ESマネジメント室リーダー

『TOKYO GLOBAL GATEWAY』は、幼児から社会人までを対象に、英語学習の意欲向上のきっかけづくりとなるよう開設された、まったく新しいタイプの体験型英語学習施設です。広大なアトラクションエリアには、空港やホテル、レストランなど外国における日常の風景がリアルに再現された12種の部屋があり、ここで生徒たちは外国人とコミュニケーションを図ります。また科学やSDG’sなどさまざまなテーマを、英語「で」学ぶためのエリアや、海外留学をイメージしたキャンパスゾーンも設置。まさに英語漬けの環境が体験できるこの施設を立ち上げた、取締役と外国人スタッフ二人に話を聞きました。

東京の国際都市化に向け、“話す”英語が苦手な
子どもたちに、生きた英語を使う場所を

「TOKYO GLOBAL GATEWAY」(以下TGG)が、東京都教育委員会とともに立ち上げられたきっかけを教えてください。

2016年ごろになりますが、当時、 東京都教育委員会は東京オリンピック開催を控え国際都市を作っていくうえで、それを担うべき児童生徒の英語力に課題を抱えていました。試験を解いたりする英語は点数が高いけれど、手紙を書いたりする、特に“話す”英語が苦手であるという危機感ですね。ただ、日本に住んでいると英語を使う必要性があまりないことは確かで、子どもたちからすれば「なんで英語を使わなきゃいけないの」と。であれば、英語を使う場所を用意した方がいいと、東京都の有識者会議でそういう発想に至ったことが始まりです。その一方で、学研グループは英語に関する出版は行っているものの、市場ではまったく“英語の会社”という認知がありませんでした。あくまで学校でやる教科の一つであって、そこからどうやって英語に参入していくかと考えたときに、児童生徒が話す部分に弱いのであればそのお役に立てる事業をつくろうということで、スタートを切りました。

その後、どのような経緯で学研を含む5社が携わるようになったのですか?

東京都がこうした企画を考えていることは知っていましたが、1社だけでの実現は難しいものでした。建物を持ち、カリキュラムを作り、外国人スタッフを雇い、学校に営業して、なおかつ、怪我なく満足いただいて「楽しかった」とお帰りいただくというのはハードルが高い。そのときに市進グループから一緒にやらないかとお声掛けをいただきまして。しかしその2社だけでもやはり足りないため、外国籍のスタッフの方を採用した経験が豊富で学校の研修も行っているELEC(英語教育協議会)と、小学生の英語教育が上手なLCAの方にお会いしてみたら両社とも「ぜひやりましょう」と言ってくれました。これでカリキュラムができ、スタッフも揃い、営業もできる体制が整いましたが、よりよく広報・マーケティングをするために、博報堂にも入っていただいて5社になったという経緯になります。約2年間の準備期間を経て、2018年9月に開業しました。

ホテル、薬局など外国における日常の風景がリアルに再現された部屋があり、その空間に沿った英語体験をすることができる
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ホテル、薬局など外国における日常の風景がリアルに再現された部屋があり、その空間に沿った英語体験をすることができる

S.T.さんの役割はどのようなものでしょうか?

私は立ち上げのときから、企画や推進の窓口を統括的な立場で担当してきたのですが、もともと、学研でもずっとやってきた経験から「学校に対する営業はやります」というスタンスでスタートしました。その後はカリキュラムを作成したり、外国人スタッフと一緒に良い体験をつくろうということでその中身を練ったりしました。また、最新の知見に基づいたオリジナルプログラムを作成するため、上智大学外国語学部教授の和泉伸一先生や東京国際大学教授で立教大学名誉教授の松本茂先生、その他の英語教育に携わる様々な先生方も含めて、現在の学校教育について多くのアドバイスをいただきました。私たちみたいな昔の世代とは違い、今は実践的な英語が授業の中心になっていますので、先生方の助言に従い、CLIL(内容言語統合型学習)やPICサイクルといった要素も採り入れ、英語を使いたくなる環境とプログラムをつくり上げました。その中で私はいわば、村長のような立場でしょうか。“エグゼクティブ村長”ですね。

学研の編集者とともに練り上げたプログラムと、
アトラクションのような楽しい空間での学び

TGGの特長を教えていただけますか?

一つ目は、本当に海外にいるような空間づくりにより、ここに来る児童生徒たちが、勉強だと思っていないところです。テーマパークのアトラクションのように、学校で習った英語を話す体験ができますから。学校とは違い、スイッチが入りやすいと皆いいます。今の子どもたちは目が肥えているので、つくりが貧相だと燃えてこないのですよね。そして二つ目は、プログラム。「ミッションカード」を用意しており、たとえばこれに「この週末の旅行のアクティビティを選んでください」などと書いてあります。これなしに「はい、英語を話して」と言われても“しゃべることがない”となってしまうのですが、カードのおかげで発話がしやすい。中級、上級になるとミッションがだんだんと難しくなってきて、語彙力も必要になってきます。これらは学研グループの編集者と一緒につくり、学年ごとに習う単語を踏まえていますから、先生方も評価に役立てやすいそうです。学校に対する営業がしやすいという利点もあります。

TGGでの体験は授業の単元として認められているそうですね。

はい。ここでやったことが、学校の授業としてカウントされるという評価をいただいています。私立だけでなく公立でも、全国から訪れる小中高等学校の9割が授業として認めています。また三つ目の特長は、「エージェント」と呼ばれるイングリッシュ・スピーカー(ES)がいること。「彼らのような外国人がいるから来たい」と思っていただけることが、TGGの魅力だと思います。ちなみに現在は年間で15万人ほどの児童生徒に来ていただいていますが、そのうちの14万8000人ぐらいの子どもたちにとっては、ここでの体験が“生まれて初めて直接外国人と話した体験”になるんですよね。これはとても大きな体験で、忘れられない出来事になると思います。先日、東京外国語大学でお話をする機会があったのですが、何人かの生徒から「高校1年生のときにTGGに行き、それがきっかけで外国語を学ぶ道に進んだ」といわれ、うれしかったですね。立派な施設とカリキュラムがあっても、それだけでは“ワーク”はしなくて。これはやはり、今ここにいる二人のようなスタッフが素晴らしい体験を提供してくれているおかげです。

TGGのような新しい教育方法で英語を 学ぶことは、
日本にとって非常に良いチャンス

ESのお二人はそれぞれ、なぜTGGで働くことになったのですか?

2012年に旅行で2週間日本に来た際、カルチャーショックを受けました。それはポジティブなショックで、いい意味で日本に惹かれ、もう一度行きたいと思い、母国のフランスを離れ、改めて来日しました。その後は小学校や高校で英語の先生として働き、英語教育に貢献したいと思うようになりました。TGGがオープンする際に外国人スタッフを探していて、私自身この新しい英語教育のやり方に興味を持ったことがきっかけです。

私はジャマイカから来ました。いろいろな国を旅したいと思う中、日本の島根県で英語を教える仕事をいただいたので、まずはそこで働いていました。都会にも行ってみたいと思っていたところ、TGGのスタッフ募集を知りました。それまでのようにテキストを開いて教えるのではなく、体験型というところに惹かれました。コミュニケーションがすごく重要となる、フレッシュな教え方だと思っています。

お二人は、日本人の英語力が低いのはなぜだと思いますか?

フランス語と英語の場合は、言葉のルーツが40%くらい似ているのですが、日本語と英語はまったく違います。まずそこが日本人にとって、英語が難しい理由ではないでしょうか。もう一つ、日本とフランスは個人的にはとても似ている部分があると思っています。それは日本が独自の素晴らしい文化を持ち、日本人自体もそれに対して誇りを持っているところ。フランスでも同じで、自国の文化に対して満足してしまっている部分があるため、外の文化に触れようという気持ちが起きにくいのではないかと思います。

日本の生徒さんは、英語に限らず完璧を求める性格から、間違えてはいけないという考え方が常にあり、しゃべるのを躊躇してしまう子が多いです。英語に完璧を求める理由は、おそらく日本の英語教育の始まり方にあると思います。まずテキストを開いて文法を学び、その後ボキャブラリーを勉強する内容なので、英語へのアプローチを難しく考えてしまっているのだと思います。

日本の英語能力ランキングが非常に低いという事実は、実際には大きなチャンスだと考えています。将来、日本人は英語を話すのがますます上手になっていくはずです。そのために、TGGのような場所で異文化や英語について新しい教育方法で学ぶことは、日本にとって非常に良いチャンスだと思います。

TGGの今後の事業展開はどのように考えていますか?

一つは、ここのように大きな英語村を増やすことですが、今の規模の英語村を開業するには、ある程度の来客が見込める大都市圏に限られてしまいます。そこでもう少し小規模な塾教室のようなものも開業できないかと考えています。TGGには現在、300名ほどの外国人スタッフがいますが、たとえばそのうちの誰かが日本の別の場所に引っ越すとなった場合、ここのノウハウを使った英語教室をのれん分けするような形もあるのではないかと構想しています。

学研グループが、こうしたグローバルな事業をやる意義はどこにあると考えますか。

学研グループの強みは、やはり多様なチャンネルがあることだと思います。その中で公共に近い学校教育のチャンネルをしっかりやることは、グローバルな事業をやる意義なのでしょう。 もしも私個人が「S.T.エデュケーション」という会社をつくったとしても、こうした仕事はできないと思います。上場企業とか大きな会社であれば、これはやはり社会的な使命でもあるのだと思います。経済、外交、国防、そして教育と福祉。この5つは国の基盤ですから、TGGでも教育はしっかりやっていきたいですね。

S.T.

(株)TOKYO GLOBAL GATEWAY 常務取締役
(株)GAKKEN CC 代表取締役

1997年入社。教材営業を担当後、2003年以降の20年間は、事業開発を担当している。特に2016年からTOKYO GLOBAL GATEWAYやGlatsなど、語学サービス事業の開発に従事。2021年からはGAKKEN CCで中国語オンラインレッスンも担当。児童生徒から大人まで、幅広い世代にサービスを開発、販売している。今後はAIを使った新サービス等の変化にも対応していきたいと考えている。
最近は、中国語学習とプログラミングにも挑戦中。

J.D.

(株)TOKYO GLOBAL GATEWAY 教育サービス部 ESマネジメント室リーダー

2018年3月にTGGに入社。ESとして来場者の英語学習をサポートする業務から、ESのトレーニングや採用、フロアの監督、コンテンツ作成のサポートなど、業務内容は多岐にわたる。
2023年7月より、教育サービス管理部門のESマネジメント室のリーダーを務める。
横浜ベイスターズの大ファン。旅行も大好きで、特に伊香保や京都がお気に入り。

K.B.

(株)TOKYO GLOBAL GATEWAY 教育サービス部 ESマネジメント室リーダー

2018年8月にTGGに入社しパートタイムのスペシャリストとして2年半、2021年10月から契約社員として2年間勤務。ESマネジメント室の運営、現場監督、スタッフの研修と採用や教材の作成などを行う。リーダー昇格後は特に、サービスの向上とより良い英語体験をお客さまにお届けするため、各国から集まるスタッフが過ごしやすい職場環境づくりを心がけている。
歴史、写真、ファッション、旅行、音楽、グルメ、キックボクシングが好き。

※ご紹介した情報、プロフィールは取材当時(2023年10月)のものです。

サービス・事業紹介

TOKYO GLOBAL GATEWAY

TOKYO GLOBAL GATEWAYは体験型英語学習施設として、2018年9月に東京都江東区青海に、2023年1月には東京都立川市に2施設目としてTOKYO GLOBAL GATEWAY GREEN SPRINGSを開業、年間15万人の生徒・学生の皆さまにご利用いただいています。

英語で世界中の多様な人々とつながる「ワクワクする体験」を通して、「伝わる」「わかる」「協働する」という感動を提供いたします。