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小学生白書Web版 2012年7月調査

第3章 どのような子どもが理科を好きになるのか

遠藤宏美(宮崎大学特任助教)

はじめに

2012年4月に実施された「全国学力・学習状況調査」の結果によると、理科の正答率が高い児童・生徒は、「科学や自然について疑問を持ち、その疑問について人に質問したり、調べたりすることがある」、「理科の授業で学習したことを普段の生活の中で活用できないか考える」、「理科の授業でものをつくることは好き」などと回答する傾向があるという。さらに「理科の勉強は好き」と回答した児童・生徒のほうが、理科の正答率が高かったようである(1)。これらの結果は、理科の勉強が得意であったり好きであったりすることに、子ども自身の性格や行動特性が関係していることを示唆するものである。

なるほど、私たち大人も普段の生活の中で、ある人の特徴的な性格や行動から「あの人は理系っぽい」、「きっと理科が得意なのだろう」と推測することは、そう珍しくない。しかしその「推測」は、果たしてどのくらい的を射ているのであろうか。一方、理科の学習に向いていると考えられる性格や行動特性を有しているとしても、皆が皆、「理科好き」になるわけでもないだろう。では、子どもの「理科好き」を支え、伸ばす環境があるとしたら、それはどのようなものであるのだろうか。

また、各種調査において、男子に比べて女子には理科が嫌いな子が多い(あるいは理科が好きな子が少ない)ことが指摘されている(2)。筆者らが2010年に小学生に対して行った調査(3)においても、最も好きな教科に「理科」を挙げたのは、6年生男子で14.0%であったのに対し、同女子では2.0%とほとんどいなかった。一方、最も嫌いな教科に「理科」を挙げたのは、同男子が4.0%であったのに対し、同女子では7.0%と多かった。このように、理科を好きになるかどうかに男女で差があるのであろうか。あるとしたら、その背景には何があり、「理科好き」を増やすためにはどのようなアプローチが考えられるのであろうか。

第1章・第2章では、主に保護者の社会的属性やしつけ・教育方針などの違いが、子どもの理科や科学に対する興味・関心にどのように影響を与えるのかを探ってきた。第3章ではさらに、子どもの「理科好き」を伸ばす要因として、子ども自身の性格や行動特性に着目する。そして、子どもの「理科好き」を支える「環境」として、子どもの暮らす生活環境や家族のかかわりに着目し、「理科好き」な子どもを育てるためのヒントを探ってみたい。

<注>
(1)国立教育政策研究所「平成24年度 全国学力・学習状況調査 調査結果のポイント」(平成24年8月、http://www.nier.go.jp/12chousakekkahoukoku/02point/24_chousakekka_point.pdf 2012年9月15日接続確認)
(2)たとえば、河野銀子・池上徹・中沢智惠・藤原千賀・村松泰子・髙橋道子「ジェンダーと階層からみた『理科離れ』 ―中学生調査から―」(『東京学芸大学紀要第1部門』第55集、2004年、pp.353-364)、井上恵美・池田幸夫「理科に対する中学生の意識調査」(『山口大学教育学部附属教育実践総合センター研究紀要』第25号、2008年、pp.155-163)、内田昭利・守一雄「中学生の『数学嫌い』『理科嫌い』は本当か ―潜在意識調査から得られた教育実践への提言―」(兵庫教育大学大学院連合学校教育学研究科『教育実践学論集』第13号、2012年、pp.221-227)など。
(3)学研教育総合研究所2010年9月調査の結果図s-10「好きな科目」図s-11「嫌いな科目」より。なお、この調査では教科ごとに好き・嫌いを尋ねたものではなく、8~11教科等の中から「好きな科目」と「嫌いな科目」を一つずつ選ぶ方法を採ったため、理科だけを取り上げた今回の調査とは結果の意味合いが異なる。

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