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小学生白書Web版 2012年7月調査

第3章 どのような子どもが理科を好きになるのか

遠藤宏美(宮崎大学特任助教)

1.「理科好き」を伸ばす子どもの性格・行動特性
(4)理科が好きな子は、どんな教科が好き?

ところで、「理科が好き」な子はほかにどのような教科が好きなのであろうか。図3-9は男子の、図3-10は女子の、理科以外で好きな教科として回答があった割合(複数回答可)を「理科好き」の程度別に示したものである(5)

男子では、理科が「とても好き」な子の半数以上は算数や社会を好きなようであり、かつ「まあ好き」や「好きではない」子よりもその割合は高い。算数・社会には及ばないものの、図工や家庭科も「理科好き」な子には好まれているようである。これらの教科は、理科が好きであればあるほど、好まれる傾向にあるようだ。逆に体育は「理科が好き」な程度が強いほど、好まれていないようである。また、総合的な学習の時間や音楽も、「理科好き」の程度とあまり関係がなく、男子にはあまり人気がないようである。

女子では、理科が「とても好き」な子が最も多く好んでいるのは家庭科、次いで図工である。社会や外国語、総合的な学習の時間も、理科が「とても好き」である子に人気が高い。どれも「理科好き」の程度が強いほど、好まれる傾向にある。音楽も女子に好まれる教科のひとつであるが、「理科好き」の程度とは関係がないようである。国語や算数、体育も、「理科好き」の程度とは関係がなさそうである。

そもそも男女によって好きな教科に偏りがあるため、同じように比較することはできないが、概して「理科好き」な子ほど家庭科・図工のような「ものづくり」を扱う教科を好むようである。意外にも、理科とともに「理系」として扱われやすい算数については、女子で「理科好き」の程度とはあまり関係がなさそうであった。また、男女とも「理科好き」が強いほど社会も好きであることが見て取れたが、これは小学校の社会科が調べ学習を多く取り入れていることがその一因ではないかと考えられる。

図3-9 男子の好きな教科(「理科好き」の程度別)

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図3-10 女子の好きな教科(「理科好き」の程度別)

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では、「理科好き」に関係する2つの資質と理科以外の教科の選好とはどのように関係しているのであろうか。図3-11は「論理的・計画的」得点群別に、図3-12は「好奇心旺盛・行動的」得点群別に、好きな教科の割合を示したものである。では、「理科好き」に関係する2つの資質と理科以外の教科の選好とはどのように関係しているのであろうか。図3-11は「論理的・計画的」得点群別に、図3-12は「好奇心旺盛・行動的」得点群別に、好きな教科の割合を示したものである。

図3-11によると、「論理的・計画的」得点が高い群ほど、算数、図工、国語、社会、家庭科、音楽を好む割合が高いことが見て取れる。全体的に数値が低いものの、外国語(英語)や総合的な学習の時間も「論理的・計画的」な資質が高いほど好まれる傾向にある。算数、国語、音楽などは論理的に考えることを鍛える教科、図工や家庭科はものの製作のときなど計画的な取り組みが求められる教科といえるだろう。その意味では、これらの教科の選好が「論理的・計画的」な資質の高さと関係があることは当然であると考えられる。

図3-12を見ると、「好奇心旺盛・行動的」得点が高い群ほど、算数、体育、社会、図工、音楽、家庭科が好まれており、外国語(英語)、総合的な学習の時間にもその傾向が見られる。算数や社会は問題解決志向が強く、体育はその名のとおり「行動的」な教科である。また、図工、家庭科はものごとの仕組みを知り、それを活用することが期待される教科といえ、「好奇心旺盛・行動的」得点が高い子に好まれるのではないかと推察される。

図3-11 「論理的・計画的」得点群別に見た、好きな教科

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図3-12 「好奇心旺盛・行動的」得点群別に見た、好きな教科

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<注>
(5)ただし、保護者が自分の子について回答した結果であるため、子どもが実際にその教科等を好きであるかどうかを正確に捉えたものとは言えない。

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