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小学生白書Web版 2010年9月調査 調査結果

第2章 小学生の日常生活についての意識と実態

遠藤宏美(明治学院大学非常勤講師)

2.小学生の日常生活時間とその内実
(3)圧倒的な人気を誇る携帯型ゲーム

 では、小学生がよくやる遊びは何だろうか。アンケートでは、よくやる遊びを3つまで回答してもらった。表2‐1は、男女別に人気の遊びを上位5種類まで挙げたものである。これを見ると、男女問わず、小学生に人気がある遊びは「携帯型ゲーム」(PSP、ニンテンドーDSなど)である(男子:53.7%、女子:46.2%)。次いで、女子では3位に下がるものの男子では2位と、上位に「テレビゲーム」(Wii、プレイステーション3など)がランクインし、かなりの割合を占めている(男子:46.2%、女子:32.3%)。前述のとおり、ゲームに費やす時間は相当なものである。これらの結果から、現代の小学生の遊びについては、このような電子ゲームを抜きに語るわけにはいかないだろう。とはいえ、「サッカー」や「おにごっこ・かくれんぼ・どろけい」「自転車・一輪車」など、外で体を動かす遊びを挙げる子も多く、必ずしも電子ゲームばかりしているというわけでもないようである。女子には「お絵かき」「読書」など室内でおこなう遊びも好まれているようである。男子の第4位に「バトルカード・トレーディングカードゲーム」が入っているが、いろいろなカードを集めることやそれを友だちと交換しあうことの楽しさがあるものと思われる。

表2-1. よくやる遊び(3つまでの複数回答による、上位5種類。男女別)

表

注)3つまでの複数回答。携帯型ゲーム=「PSP、ニンテンドーDSなど、携帯型ゲーム」、テレビゲーム=「Wii、プレイステーション3などのテレビゲーム」

 次に図2‐11では、全体的に「よくやる」と回答が多かった遊びを上位10種類に絞り、それらを選んだ割合を学年別に示したものである。

帯グラフ

図2-11.よくやる遊び(3つまでの複数回答による全体の上位10種(「その他」を除く)、学年別)

 男女ともに第1位に挙げられていた「携帯型ゲーム」は、実は1年生のときには第5位(23.0%)に位置するにすぎない。かろうじて「テレビゲーム」が第2位を占めているが(30.0%)、ほかにも「自転車・一輪車」(25.5%)や「おにごっこ・かくれんぼ・どろけい」(25.0%)も多いため、電子ゲームの存在は霞んで見える。

 2年生においても、電子ゲームの割合が高まっていくものの、1年生と同様の傾向にあることから、低学年のうちは1つの遊びにこだわらず、たくさんの遊びを楽しんでいるといえるだろう。

 ところが、3年生以上では様相が変わる。「携帯型ゲーム」「テレビゲーム」ともに選ばれる割合が突出して高まり、さらに学年が上がるにつれて増加していく。6年生で「携帯型ゲーム」を選んだ子は72.0%と圧倒的な割合を占め、「テレビゲーム」も半数にせまる44.5%となっている。3つまでの複数回答のため、必ずしも電子ゲームばかりで遊んでいるとは限らないが、6年生ではほかの遊びで20%を超えるものはなかったことからも、電子ゲームの支持率の高さが際立っているといえよう。

 小学生に電子ゲームが好まれるいくつかの要因が考えられる。もちろん、それ自体の楽しさ、面白さやゲームの種類の豊富さなどがあるだろうが、そのほかにも「手軽さ」を指摘することができる。特に「テレビゲーム」よりも「携帯型ゲーム」の人気が全体的に高いことは、小さく、どこにでも持ち運べる「手軽さ」が子どもたちにとって魅力的であることのあらわれであると考えられる。その理由として、次のようなことが考えられる。おにごっこ・かくれんぼ、あるいはサッカーなどの集団でおこなう遊びは、ある程度の人数が集まらないとできないし、1回のゲームをするにはまとまった時間も必要となる。しかし先に見たように、4年生以降では塾に通う子が増え*注2、子どもたちは遊びに時間を費やすことも、一緒に遊ぶ相手を見つけることも難しくなっている。そこで、持ち運びが便利で、塾の行き帰りや待ち時間にひとりでもできる携帯型ゲームの「手軽さ」が好まれるのである。さらに、最近の携帯型ゲームは技術改良が進み、通信機能を利用して複数で楽しむことが可能になっており、決してひとりで画面とにらめっこする遊びではなくなっている。友だちと一緒に楽しめる機能が付加されたことにより、携帯型ゲームは圧倒的な支持を得るのに成功しているといえよう。

 また、4・5年生で26.5%と多く選ばれ第3位に躍り出るのは「読書」である。読書は通常、一人でするものであるため、自分と一緒に遊ぶ相手を見つけることが難しくなる高学年に好まれるのであろう。しかし6年生になると、順位は変わらないものの19.0%に低下する。読書はある程度のまとまった時間を必要とするため、そのような時間を確保することすら難しくなる6年生では、「読書」の支持率が低下するのだと考えられる。

<注>

*2 
今回のアンケートでは調べていないが、おそらく塾以外にもおけいこごとに通う小学生も多いと考えられ、塾通いだけが子どもの遊び時間を減らしている要因といえるわけではないだろう。

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