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小学生白書Web版 2010年9月調査 調査結果

第4章 「勉強ができる子」の今どきの姿

渡辺恵(明治学院大学非常勤講師)

はじめに

 この章では、第3章の学校の勉強の「習熟度」の枠組みを用いつつ、4年生以上の「勉強が得意な子ども」の特徴を探っていく。具体的には、「習熟度」上位グループに焦点をあて、家庭における学習の姿勢や自己認識、将来像を検討し、今どきの「勉強ができる子」の姿を描いていくことにする。

1.家庭における学習の姿勢

 「勉強が得意な子ども」は家庭においてどのような学びをしているのだろうか。

 この点を検討することに先立ち、「習熟度」3グループ別にみた中学受験の有無を簡単にみておこう。というのは、中学受験の有無が家庭での学習状況に大きな影響を与えると考えられるためである。「習熟度」3グループ別に中学受験の希望の有無を確認しておくと、私立または国立の中学受験を希望する子どもは、上位グループが31.3%、中位グループが13.1%、下位グループが3.7%である。「勉強が得意な子ども」ほど中学受験を考えている子どもが多いことがわかる。

 以下では、この点を踏まえつつ、家庭での学習状況を明らかにし、「勉強が得意な子ども」の家庭における学習の姿勢を探っていくことにしよう。

(1)通信教育を活用する傾向

 「勉強が得意な子ども」は、どの程度、通信教育や学習塾を利用しているのであろうか(図4-1)。

帯グラフ

図4-1.「習熟度」3グループ別にみた通塾・通信教育の活用状況

 「習熟度」上位グループでは、学習塾及び通信教育のどちらもしていない子どもは、28.6%である。「通塾のみ」の子どもは30.6%、「通信教育のみ」の子どもが34.7%、両方している子どもが6.1%であった。下位グループでは、どちらもしていない子どもが最も多く52.3%、次いで「通塾のみ」の 29.4%である。「通信教育のみ」は18.3%である。

 「勉強が得意な子ども」ほど、通信教育や学習塾を利用する傾向にあることがわかる。なかでも、通信教育がより積極的に活用されている。

 この「勉強が得意な子ども」が通信教育を良く活用する点は、受験という要素を除くと、際だった特徴であることがうかがえる。図4-2は、中学受験の有無と「習熟度」3グループ別にみた学習塾・通信教育の活用状況を示したものである。

 帯グラフ

図4-2.中学受験の有無「習熟度」3グループ別にみた学習塾・通信教育の活用状況

 中学受験を希望する子どもに関しては、全体の人数が少ないため、参考程度の結果に過ぎないが、学校の勉強の「習熟度」にかかわらず、学習塾を活用する傾向が強い。しかし、中学受験を希望しないあるいは未定の子どもに着目すると、「習熟度」により学習塾や通信教育の活用傾向が異なることがわかる。上位グループの子どもは学習塾(14.9%)よりも通信教育(44.6%)を利用する傾向にある。それに対して、下位グループでは、通信教育(18.1%)よりも学習塾(27.6%)を利用する傾向がみられる。

 こうした結果から、中学受験をしない「勉強が得意な子ども」は、通信教育を利用しながら、自力で学習を積み重ねる力を身につけている子どもであると推察される。このような学習の姿勢は、家での勉強時間にも現れると考えられる。

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