M.T.

右:(株)学研ココファン・ナーサリー 新規事業開発部部長

A.M.

左:(株)学研ココファン・ナーサリー 新規事業推進部

「クロッカ(KLOCKA)」は、保育園や学童保育など子育て支援事業を多岐にわたり展開している(株)学研ココファン・ナーサリーが、2019年に立ち上げた児童発達支援事業の施設です。ここでは発達に特性や障害がある未就学児を対象に、一人ひとりに合わせた個別の療育サービスを提供しています。(株)学研ココファン・ナーサリーで「クロッカ」など新規事業の立ち上げに携わる担当者2人に話を聞きました。

子ども一人ひとりの特性と発達に合わせた療育を提供

なぜ、児童発達支援事業「クロッカ」を立ち上げたのでしょうか?

令和4年の文部科学省の調査では、小・中学校の通常学級で「発達障害の可能性がある」とされた児童生徒は8.8%に上ります。また、幼児期においても発達にさまざまな特性がある子が増えているといわれています。(株)学研ココファン・ナーサリーでは、こうした子どもたちを支援するため、幼児期から特性に合わせた療育(発達支援)サービスの提供をしていこうと、2019年に児童発達支援事業の「クロッカ」を立ち上げました。現在は、東京と神奈川で「クロッカ」の施設を計6か所、運営しています。

「クロッカ」の療育のいちばんの特長は何でしょうか?

「オーダーメイド療育」といって、お子さん一人ひとりの発達や特性に合わせた療育サービスを提供していることが「クロッカ」最大の特長です。「クロッカ(KLOCKA)」という言葉は、スウェーデン語で「見つめる」という意味です。お子さん、そして保護者の一人ひとりをしっかりと見つめ、寄り添っていこうという思いが、そこには込められています。療育においては「アセスメント」といって、お子さんが今どういう状況かを診断することが出発点として重要です。「クロッカ」では、得意なところ、苦手なところなど、お子さんをまずきちんと見つめて、どういう支援をすれば成長を支えていけるか、より伸ばしていけるか、という視点を大切にしています。

「クロッカ」の療育では、一施設における定員は10名まで。マンツーマンの「個別」クラスをメインに、少人数による「グループ」クラスも設定し、保護者のご希望もうかがいながら、お子さんの行動の特性や発達段階に合わせてプログラムを組んでいます。他社では「この年齢の子どもには必ず全員にこの教材を使わせること」「時間内に個別教育と運動療育の両方をすること」といった決まりがある施設もありますが、「クロッカ」では運動が必要なお子さんには運動を取り入れ、就学準備が必要なお子さんにはノートを使ったり手をあげて質問したりする練習を取り入れるというように、あくまでも一人ひとりに合わせた療育の提供を行っています。

「クロッカ」では保護者支援も行っていますか?

「クロッカ」では、療育はお子さんと保護者の支援はセットと考えています。発達に特性があるお子さんの育ちを保護者がありのままに受け入れることは、決してたやすいことではありません。特に幼児期の発達は行ったり来たりです。園の運動会などで、他のお子さんと比べて「うちの子はできない」と大きなショックを受ける保護者もいらっしゃいます。そうした気持ちに丁寧に寄り添い、支えになっていきたいと私たちは考えています。
そのため、療育には毎回必ず保護者と担当が話をする時間もとっています。その日の療育内容とお子さまの様子をお伝えし、日々の生活での困りごとの相談にも乗っています。

「クロッカ」では、お子さんや保護者と一対一で丁寧に関わることによって、よりよいサポートの実現を目指しています。こうした「クロッカ」の姿勢は、この仕事に携わる職員のやりがいを高めることにもつながっています。

子どもとの信頼関係を築き、常にその子の成長をいちばんに考える

お子さんが通っている保育園・幼稚園と「クロッカ」の連携はありますか?

「クロッカ」では保護者の了承を得た上で、お子さんが通っている保育園や幼稚園を訪問し、園でのお子さんの様子を見て園の先生と情報共有したり、「こういうとき、この子はこういう考えや思いを持っているかもしれません。ですから、このようにしてみてもよいですね」などと提案をしたりすることもあります。これは、「クロッカ」の利用者であるお子さんと保護者だけでなく、その子の対応に迷っている園へのサポートにもつながります。

(株)学研ココファン・ナーサリーは、地域とつながり、「子育て支援ネットワーク」のハブ(拠点)となることを目指しています。その基本方針に沿って「クロッカ」の施設は当社の保育園のなるべく近くに作られています。神奈川県藤沢市にある「クロッカ Fujisawa SST」では、同じ建物内に学研ココファン・ナーサリー運営の保育園があり、より密接な連携が可能になっています。

「クロッカ」を利用した方からは、どんな声が届いていますか?

「『クロッカ』と一緒に子どもを育てている感覚だった」「『クロッカ』の存在に助けられた」といったお言葉をご利用者の方や退所された方から、たくさんいただいています。当初は「嫌だ!」しか言わなかったお子さんが、会話がたくさんできるようになった姿を実際に目にした時には、私も胸が熱くなりました。やはり職員がお子さんと一対一で、真摯に、丁寧に向き合っているからこそ、そうした成長が見られるのだと思います。発達に特性があるお子さんの成長はゆっくりですが、ゆっくりだとしても、みんな、その子のペースで成長しています。成長してないお子さんはいないのですよね。

お子さんの日々のちょっとした言動から、現場の職員が一人ひとりの子どもと信頼関係を築き、とても丁寧に接している、ということが伝わってきます。そういうことに触れたときは、心から嬉しくなりますね。

「クロッカ」で働く職員の研修制度について教えてください。

児童発達支援事業所は、児童発達支援管理責任者の資格保有者の配置が義務づけられています。職員の皆さんは資格を取りたいという気持ちが強い方が多いです。「クロッカ」では、自治体研修の情報収集や、資格取得のための時間確保、OJT(実務を通じて知識や技術を身につける人材育成法)制度の整備など、職員の資格取得を積極的にサポートしています。

「クロッカ」の新規開設の計画はありますか?

2019年の立ち上げ以来、年1拠点増のペースで進んできましたが、必要な方に療育を届けるため、新規開設を加速させるという方針のもと、2024年から2025年にかけて一挙に5拠点の新規開設を予定しています。

拠点が増えることによって、支援できるお子さん、保護者、そして園も増えることになります。採用や営業の仕事に追われて毎日大変ですが、社会の中でサポートできる範囲がどんどん広がっていくことは、とても喜ばしいことです。

未来につながる療育で、一生を通じたサポートを実現する

「クロッカ」を通して、どんな社会づくりに貢献したいですか?

私は(株)学研ココファン・ナーサリーに転職する前に、保育士と小学校教諭をしていたのですが、その経験から言えることは、「大人の対応次第で子どもの反応は大きく変わる」ということです。いちばん大切なのは「この子は障がいがあるからできない」と色眼鏡で見たり、こちらで限界を決めたりしないこと。できるようになるためには、こちらがどうアプローチし、どうサポートするのか、という道筋を考えていくことが大切です。

「クロッカ」の療育は、「みらいへ続く子どもをはぐくむ」ことを目指しています。将来、学校や社会に出たときに、その子らしく生きていくための力、たとえば、苦手なところを自分で理解する力や、自分一人で抱え込まずに「わからない」「困っている」と周囲に発信する力を、「クロッカ」の療育を通して子どもたちに身につけてもらえたら、と思います。同時に、こうした子どもからの発信をきちんと受け止められる社会側の環境整備も必要です。

「クロッカ」を通して、子どもたちがのびのびと過ごしていけるような社会を実現することができたらいいなと思います。

「クロッカ」の職員は、日々の療育はもちろん、お子さんが通う園との連携や、入学する小学校への申し送り書の作成など、一つひとつのことに本当に真摯に取り組んでいます。そこには、これから「クロッカ」を卒業して環境が変わっても、社会の中で健やかに育っていってほしいという子どもの未来への強い思いが込められています。どんなお子さんも、そのお子さんに最適な学びの仕方や成長のスピードがあるはずです。それを「できる/できない」ではない軸で、子どもそのままを受け止めて多様な学びや発達を支援する、そんな社会にしていきたいですね。

「クロッカ」は未就学児が対象ですが、就学後の事業はありますか?

どんなお子さんにも、そのお子さんに合わせた支援策と居場所を提供していこうというのが、(株)学研ココファン・ナーサリーの基本理念です。小学生の不登校児を対象としたフリースクール「みらいゲート」を2022年から運営しています。さまざまな理由から学校や学童に居場所を見つけられなかったり、集団になじむのが難しい子どもたちのために居場所を提供して、学習サポートにも力を入れています。保護者からの希望者があれば、小学校と連携して出席認定の対応も行います。

乳幼児期から小学生までの育ちを支え、年齢だけではなくお子さんの発達や特性に合わせたサポートを可能にすることは、地域における子育て支援ネットワークのハブ(拠点)を目指す(株)学研ココファン・ナーサリーならではの強みといえると思います。

M.T.

(株)学研ココファン・ナーサリー 新規事業開発部部長

(株)学研エデュケーショナルに幼児インストラクターとして入職後、学研教室の教材編集と研修全般の企画・実施、統括を行う。(株)学研ホールディングス経営戦略室ではプロジェクト運営や他社との提携等に携わる。現在は(株)学研ココファン・ナーサリーにて、児童発達支援事業「クロッカ」、小学生のためのフリースクール「みらいゲート」の運営統括を担当する。
イルカやクジラが大好きで、素潜りが趣味。

A.M.

(株)学研ココファン・ナーサリー 新規事業推進部

保育士、小学校教諭と教育関連の仕事に従事したのち、2022年に(株)学研ココファン・ナーサリーに入社。児童発達支援事業「クロッカ」の運営担当として運営面の整備や自治体との連絡調整、新規施設の立ち上げ、施設サポート、採用面接等の業務を行う。
美味しいもの目的で旅行するほど食べることが好き。
 

※ご紹介した情報、プロフィールは取材当時(2024年6月)のものです。

サービス・事業紹介

クロッカは「みらいへ続く子どもをはぐくむ」ことを目指し、
個別療育を中心に、グループ療育も提供しています。
ご家族や園とともにお子さまの成長をサポートします。