A.N.

(株)学研ココファン ココファン藤沢SST コーディネーター

Fujisawaサスティナブル・スマートタウン(以下、Fujisawa SST)は、エコ&スマートなくらしがうまれ続ける街として、2014年に誕生しました。(株)学研ココファンをはじめとする学研グループのほか、複数の企業や団体が参画し、新しいスマートシティとして成長しています。今回はFujisawa SSTの中にある「ウェルネススクエア南館/ココファン藤沢SST」で介護事業や保育・教育事業などを軸に多世代間の交流と住民同士の関係構築を目指すA.N.さんに、 街の様子と現状、課題などを伺いました。

教育・健康・介護・福祉を包括的に提供する施設・ウェルネススクエア南館

まず、Fujisawa SSTとは何ですか?

Fujisawa SSTは、先進的な取り組みを進めるパートナー企業と藤沢市の官民一体の共同プロジェクトで、技術先行のインフラ起点でなく、住人一人ひとりの「くらし起点」の街づくりを実現することを目指しています。
パナソニックさんの工場跡地を利用して作られていて、パナソニックさんを中心に、私たち学研グループを含めた20社近い企業や団体が協力・連携した街づくりが今も進められています。
 

そのなかで学研グループの位置づけはどうなっていますか?

Fujisawa SSTの中に「ウェルネススクエア」というエリアがあって、子どもから高齢者の方まで、すべての世代の人が健やかに自分らしく暮らし続けられるサービスを提供しています。学研グループはそのなかで、高齢者住宅の「ココファン藤沢SST」を中心に、介護・子育て支援・教育分野を担っています。
私が特徴的だと思うのは、これら学研グループのサービスを同じ建物『ウェルネススクエア南館』で包括的に提供している点です。それぞれのサービスが垣根を越えてつながっていますし、この施設を使う幅広い世代の方々がウェルネススクエアを訪れ、自然な交流が多世代間で生まれています。
 たとえば、毎朝ウェルネススクエア南館の交流ホールにココファンのご入居者様たちが集まって、体操をしていらっしゃいます。そこに、併設しているGakkenほいくえんの園児が登園してきて顔を合わせる機会が増え、「おはよう!」と挨拶し合う関係が自然に生まれました。建物の玄関がひとつで、交流ホールを必ず通る動線になっているので、こういった交流が生まれるのだと思います。
ご入居者様たちは家族と離れて暮らしているので、園児たちを自分の孫のように感じていらっしゃるようです。なかには子どもたちに会いたいと、それまで体操を敬遠していたにもかかわらず、参加するようになった方までいらっしゃいました。子どもたちが癒やしや元気の源になっているのだなと感じます。
一方の子どもたちも、自分のおじいちゃん、おばあちゃんに対するように、駆け寄ってきてハグしてくれたりします。また、Fujisawa SSTの外へ買い物に出かけたご入居者様が、顔見知りの子にばったり出会ったことを「話しかけられたの!」と嬉しそうに話してくださったたこともあります。
 

世代間の交流を増やして、街ににぎわいとあたたかさを!

ご自身は最初から介護職希望だったのですか?

もともとは小学校の先生になりたかったので、教職課程を取って実習にも行きました。そこでデイサービス施設の体験実習をしたのが、介護職に就くきっかけです。私は子どもの頃から茶道を習っていて、先生に付き添って高齢者施設でのお茶会に何度も出かけたことがあります。それで特に抵抗感を抱くことなく実習をこなしていたのですが、高齢者の方に体操を教えたり一緒にレクリエーションをやったりする点は、小学校の先生と共通していると思うようになりました。それで教職から路線変更して(株)学研ココファンへ入社しました。その後はケアスタッフとして数年勤務をしていました。その後育児休暇を経て昨年から復帰したのですが、新しい挑戦として会社から現在のコーディネーター職を勧められました。まったく予想をしていなかったポジションでしたので最初は戸惑いましたが、前任者が残してくれた資料をもとに手探りで進めてきました。

そのコーディネーターとは、どんな仕事をするのですか?

主な役割は、高齢者と子どもたちといった世代間が交流できる機会・場を作ることだと思っています。この施設自体がその一端を担っているのですが、将来的にはFujisawa SSTを含む地域全体で多世代交流ができるといいなと思います。
 ただ、コロナ渦で従来までのイベントはまったくできなくなってしまったので、これから徐々に復活させたり、新しい催しに挑戦したりしようと試行錯誤しているのが現状です。昨年11月には、その第一弾として『ウェルネスマルシェ』を開催しました。楽しみながら健康・福祉・教育について知ってもらうだけでなく、これまで来たことのない方にウェルネススクエアへ足を運んでもらうこと、知ってもらうことが目的のイベントです。ここは施設を利用していない世帯にはまだなじみにくい場所かなと思い、少しでも親しみを持ってもらえたらと考えました。施設内の会場にはGakkenほいくえんの実験コーナーや学研ココファン・ナーシングのアロマハンドマッサージなど、学研グループで考案したブースを設置、施設の外ではキッチンカーやパン、地元野菜の直売、ドリンクやお菓子のコーナーなどを設けて、工夫を凝らしました。お昼の時間限定で、自動配送ロボットの湘南ハコボと、遠隔操作で動く分身ロボット「OriHime」が登場し、Fujisawa SSTオリジナルコーヒーとクッキーも販売しました。子どもたちが「OriHime」と楽しそうに会話する姿が印象的でした。
 

こういったイベント企画では、Fujisawa SST外のお店などに出店依頼をしたり、チラシを作ったり、それをいつ、どのタイミングで配るかといった戦略の立案をしたりしています。今回初開催したマルシェでは、同じ11月のはじめにFujisawa SST全体のイベントでチラシを配布させていただいたことにより、多くの方にご来場いただくことができたのでとても嬉しかったです。
他にもコーディネーターとして、毎月行われるFujisawa SST内の企業のワーキンググループに出席して各企業との意見交換をしています。企業間のつながりももっと広げていきたいですね。
 

コーディネーターの輪を広げて 幸せな街を増やしていきたい

今後はどんな取り組みをしていきたいですか?

世代間交流を軸にしつつ、もっと各世代に寄り添った催しも試してみたいです。まだ構想中の企画としては、本や駄菓子をメインにした交換会のようなイベントを考えています。最近の子どもたちは本をあまり読まないようです。ウェルネススクエア南館の交流ホールにも閲覧や貸し出しができる学研グループの本をたくさん並べているのですが、手に取る子は限られている感じがします。そこで子どもたち自身が持っているおもしろかった本、年齢が上がって読まなくなった本を、次の誰かにお渡しする機会を作ろうと考えています。子どもたちにPOP(その本の良さなどを伝える宣伝カードのようなもの)を書いてもらって、「ここがおもしろかったよ!」「これがかっこよかったよ!」みたいな会話をしながら本をやりとりして、本自体をご近所の人にも親しんでもらいたいです。
 そこに加えるのが、子どもたちの大好きな駄菓子です。いろいろな駄菓子を仕入れてお店を開き、そこで子どもたち自身が買い物をできるようにしたいと考えています。お金の使い方を学びながら、おいしいお菓子が食べられる。いつもは遠いお店まで行くけれど、近くで買える。その流れでかわいい、かっこいい本が目に入れば、きっと喜んでくれると思います。
 

そうした仕事を通じて、社会にどう貢献していきたいと考えていますか?

学研グループは「学研版地域包括ケアシステム」という街づくりの取り組みを推進しています。まさにこのFujisawa SSTのように、0歳から100歳を超えるご高齢者まで、多世代が支え合いながら地域のなかで安心して暮らし続けられることを目指しています。㈱学研ココファンは、この取り組みの拠点となる高齢者向け住宅を運営しているのですが、ウェルネススクエア南館のような多機能・複合型の拠点はまだ全国で数拠点程度です。私のようなコーディネーターの人数はかなり少ないので、もっとコーディネーター同士で情報共有をしたいですね。リモート会議でもよいので、各地域のコーディネーターと交流して成功例や失敗例を共有できれば、より効果的に交流機会の創出が可能になるはずです。また、複合型ではない拠点でも交流や地域とのつながりをもっと生みだすことができるのではないかと思います。それができればこのFujisawa SSTのように、つながりが生まれ、安心して暮らし続けられる場所が日本各地に増えていくのではないか。コーディネーターとしてそのきっかけとなることができたら、とても嬉しく思います。

A.N. 

(株)学研ココファン ココファン藤沢SST コーディネーター

2017年3月、(株)学研ココファンへ入職。4月から湘南片瀬事業所に配属、ケアスタッフとして着任。2018年4月からレジデンス茅ヶ崎事業所に配属。2019年4月からFujisawa SST事業所に配属、ケアリーダー・多世代交流委員として着任。2023年5月からコーディネーター職に着任。現在は、Gakkenほいくえんとココファン入居者の多世代交流や、Fujisawa SSTの協議会や地元企業と協力したイベントの企画などを行っている。
2歳男の子の育児に奮闘中。韓流ドラマを観ることにはまっている。
 

※ご紹介した情報、プロフィールは取材当時(2024年5月)のものです。