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研究分野:教育情報研究分野

シリーズ「教育大変動」を語る

第1回

「義務教育国庫負担金はどう審議されたか?」

不条理な二者択一 「国庫負担廃止」か「改革」か
古川:
 昨年、義務教育に関する総合的かつ抜本的な改革のヴィジョンが示されました。それが、中教審義務教育特別部会の答申「新しい時代の義務教育を創造する」です。

 義務教育特別部会では100時間以上の審議が行われましたが、半数近くの時間が「義務教育国庫負担金」の問題に充てられました。しかし一方、(1)義務教育の制度・教育内容、(2)国と地方の関係・役割、(3)学校・教育委員会、(4)学校と家庭・地域の関係・役割、といった重要なテーマも議事に盛り込まれました。こうした義務教育特別部会が設置された背景には何があったのでしょうか?
藤田:
 三位一体改革※1を進めるにあたって、税源移譲の財源に義務教育国庫負担金を充てるかどうかが争点になったわけですが、政府・与党合意で、どうするかは中央教育審議会の答申を受けて決めることになりました。義務教育特別部会は、その是非を審議検討するために設置されたわけです。ところが、政府の基本的な考えもマスコミの論調も、義務教育国庫負担金を維持しようとする文部科学省は守旧的な抵抗勢力だというものでした。この点に、義務教育特別部会の立場の難しさと不幸がありました。

 特別部会が同負担金を維持すべきだという結論を出すなら、その場合、中教審も文科省も、改革に積極的に取り組んでいるということを示すためにも、アピール力のある具体的な改革案を提示しなければならないという皮肉な課題を負わされることになったからです。この皮肉な課題に答えるためにも、構造改革案が提示されることになったと言えます。

※1 (1)国の補助金を削減する。(2)地方に税源を移譲する。(3)地方交付税を削減する、を同時に行う行政財改革。2004年の経済財政諮問会議で2006年までに4兆円の補助金削減が決まった。2005年度にまず1兆円の削減が決まったが、残りの3兆円に対し、地方6団体が「国庫補助負担金に関する改革案」(2004年8月)を提出。この中には、第1期改革(2004~06年度)に中学校教職員の給与(約8500億円)の税源を移譲、さらに第2期(2007~9年度)までに義務教育国庫負担金の全額(約2.5兆円)を廃止する案が含まれている。
 この地方案に対し、政府と与党は2004年11月「中央教育審議会でこれを審議し、2005年10月に出される答申を待って恒久措置を講ずる」と、結論を中教審に委ねた。

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