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研究分野:教育情報研究分野

シリーズ「教育大変動」を語る

第8回

「教育基本法」改正(案)で教育はどう変わる?

義務教育の年限はなぜ削除された?
古川:
 第五条では義務教育の年限が削除されています。教育課程部会でも審議されていますが、義務教育年限拡大の可能性を示唆しているのでしょうか。
木村:
 基本的には教育基本法は公理ですから、義務教育の年限まで書き込む必要はないということです。
古川:
 第六条の2では規律や学習への意欲について公理以上と思われる詳細な記述※3がありますが…。
木村:
 韓国やフランスの教育基本法にも似たようなことが書いてあります。そこまで教育基本法の中に入れなくてもよいのではという考え方もありますが、家庭における教育が欠落して、学校でルールを守れない子供たちが急増している現状を見ると、やはり書き込むことが必要ですね。
古川:
 現行法には無かった高等教育についての記述が、新たに第七条に追加されました。
「教育基本法」改正の経緯
・2000年12月:「教育改革国民会議」報告、15の具体的施策とともに、教育基本法の見直しと教育振興基本計画の策定の必要性を提言
・2001年11月:中央教育審議会に諮問
・2002年11月:中央教育審議会が「中間報告」を提出、国民各層からのヒアリングと意見を募集
・2003年3月:中央教育審議会が答申「新しい時代にふさわしい教育基本法と教育振興基本計画の在り方について」を提出
・2006年4月:与党教育基本法改正に関する協議会「最終報告」取りまとめ、閣議決定・国会提出
・2006年5月:衆議院に教育基本法に関する特別委員会設置
・2006年5~6月:衆議院本会議、特別委員会において、一般質疑、参考人質疑、総括質疑
・2006年6月:第164回通常国会閉会(法案は継続審議に)
木村:
 今や高校生の半数が大学に進学しています。世界的に見ても、知識の伝承と創造を行う高等教育は極めて重要な位置付けになっており、その意味でも、高等教育に対する記述が入るのは当然だと思います。
古川:
 その他に新設された条項のうち、教員※4(九条)や幼児教育※5新たな施策が答申されています。についても具体的に検討されているのでしょうか?
木村:
 家庭教育※6について、現在国として行っているのは、母子手帳を交付するときに各自治体や関係団体に講習会を行ってもらうありません。これについては、基本的な理念を基本法でうたっておくことで、各自治体のほうで独自の工夫をされるのではないかと思っています。
古川:
 宗教教育については、新たに「宗教に関する一般的な教養」という一文が追加されました。※7
木村:
 私はこれが非常に大切だと思っています。最初に英国に行ったときに、世界中から来た学生と一緒に研修を受けたのですが、彼等が多様な宗教に関する知識を持ち、それによって寛容の精神を身につけているのだということを発見しました。
 日本人も世界の五大宗教くらいについては基本的なことを知っていなければいけないと思います。無知というのがいちばん怖いというのが、私の信じて疑わないところです。また、死生観などを論じるときにも、宗教的な考え方を抜きにすることはできません。

※3 教育基本法案」(学校教育)第六条2 [新設]
 前項の学校においては、教育の目標が達成されるよう… 中略…教育を受ける者が、学校生活を営む上で必要な規律を重んずるとともに、自ら進んで学習に取り組む意欲を高めることを重視して行わなければならない。

※4 「教育基本法案」(教員)第九条[修正]
1. 法律に定める学校の教員は、自己の崇高な使命を深く自覚し、絶えず研究と修養に励み、その職責の遂行に努めなければならない。
2. 前項の教員については、その使命と職責の重要性にかんがみ、その身分は尊重され、待遇の適正が期せられるとともに、養成と研修の充実が図られなければならない。
<現行法>第6条 2.
法律に定める学校の教員は、全体の奉仕者であって、自己の使命を自覚し、その職責の遂行に努めなければならない。このためには、教員の身分は、尊重され、その待遇の適正が、期せられなければならない。

※5 「教育基本法案」(幼児期の教育)第十一条[新設]
 幼児期の教育は、生涯にわたる人格形成の基礎を培う重要なものであることにかんがみ、国及び地方公共団体は、幼児の健やかな成長に資する良好な環境の整備その他適当な方法によって、その振興に努めなければならない。

※6 「教育基本法案」(家庭教育第十条[新設]
1.父母その他の保護者は、子の教育について第一義的責任を有するものであって、生活のために必要な習慣を身につけさせるとともに、自立心を育成し、心身の調和のとれた発達を図るよう努めるものとする。
2.国及び地方公共団体は、家庭教育の自主性を尊重しつつ、保護者に対する学習の機会及び情報の提供その他の家庭教育を支援するために施策を講ずるよう努めなければならない。

※7 「教育基本法案」(宗教教育)第十五条[修正]
1.宗教に関する寛容の態度、宗教に関する一般的な教養及び宗教の社会生活における地位は、教育上尊重されなければならない。
<現行法>第九条
宗教に関する寛容の態度及び宗教の社会生活における地位は、教育上これを尊重しなければならない。

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