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研究分野:教育情報研究分野

シリーズ「教育大変動」を語る

第2回

「義務教育の構造改革がもたらす課題」

教育特区の全国化で義務教育の基盤が崩壊する
古川:
 教育の自由化の典型的な施策として教育特区※4があげられます。昨年の11月段階で67の自治体が取り組んでいますが、平成20年度から一律に全国化されることが検討されています。
藤田:
 構造改革特区というのは、経済活動面でさまざまな規制を緩和することで、地域経済の活性化を図るというのが、目的・趣旨です。では教育分野で、地域経済の活性化になるのはどういう場合でしょう。特区の教育は、補償教育的なプログラムと特権的なプログラムを区別すべきです。私は、補償教育的なプログラムを否定するつもりはない。山村僻地、過疎地などで、学校を維持するために特別なプログラムをするのはいい。しかし特権的な教育に関しては、義務教育段階では反対です。
藤田英典 教育特区の全国化を図るという意味は、学習指導要領の基準と学校設置基準のこの二つの要件をはずすということです。日本の戦後50年の教育水準を維持してきたものがはずれるということになれば、もう学校は義務教育段階では「なんでもあり」になってしまう。そのことが全く検討されていないのです。

 日本の公立学校のあるいは公教育の秩序のなかで、特別な子どもたちだけに特別なことをやる学校を認め、実際に教育熱心な家庭の子どもを集めているわけです。その学校が仮にうまくいっているとして、それを広めたからといって、義務教育全体がよくなるのでしょうか?

 それは単に特別なエリート校が一つできたに過ぎないのではないでしょうか? しかも学習指導要領の基準からはずれているわけですから、ほかの私立学校や公立学校からすれば、自分たちだって同じ条件ならばもっといいことができるということになるでしょう。

 そうなると、義務教育段階からバラバラになっていきます。そこまでして本当に何か得るものがあるのか?よく考えてみなければいけません。

※4 地方公共団体が構造改革特別区域において、学習指導要領等の基準によらない教育課程を編成・実施することができる制度。群馬県太田市の太田外国語特区、千葉県成田市の国際教育特区推進校、東京都品川区の小中一貫特区、奈良県生駒市の情報教育推進特区など。

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