TOP > 研究分野 > 教育情報研究分野シリーズ「教育大変動」を語る

研究分野:教育情報研究分野

シリーズ「教育大変動」を語る

第4回

「全国的な学力調査」の真のねらい

行政の自省自戒のための調査
古川:
 今回は悉皆による調査ですが、それによる学校の序列化などが懸念されています。昭和30年代に行われた全国学力調査(36~39年は悉皆調査)のときには、日教組の反対などがあり中止となった経緯があります。
梶田:
 あのときも、学校ごとのデータを文部省や行政が出したわけではなく、マスコミが集計したものです。今度はその轍を踏むまいということで、文科省が出すのは都道府県のデータまでです。しかし、そのデータは市町村や学校が自由に使って良い、学校ごとのデータを出しても良いということにしています。

 ただし、そこにガイドラインをつけます。学校間の順位や格差ということにつながらないような発表の仕方、結果の公表の仕方を工夫してほしいと示しています。でも、もしそれ以上やるところがあったらどうするか? それははっきり言うと民度の問題です。順位や格差にばかり関心のある人たちが多ければ、どうやってでもそれを出すでしょう。しかし、だから学力調査をしないほうがいい、というのは暴論です。

 現実には一つの町で、すごく学力の格差があるんですよ。今それぞれの自治体でたくさん調査をやっていますが、都道府県レベルではあまり差が出てこない。学校間格差が顕著なのは、指定都市や中核都市といった大きな町の中でです。日本の学校はどこに行っても同じではないことを明らかにした上で、その事実の上に立って何をしなければいけないのかを考えるということが大切です。いわば行政の自省自戒のための全国学力調査なんです。これはもう最初からそのために設計されたものなんですね。
古川:
 児童生徒にはそれぞれの結果は返却されるのでしょうか?
梶田:
 個票は児童生徒個人に返しますが、評価の仕方を工夫します。ただし、点数は公表しません。例えば、この問題であなたは正解だったのか、そして、正解者が市町村や都道府県で何パーセントいるのか、といったやり方で、点数は出しません。評価というものは本人が得意になっても失意になっても駄目なんです。これがわからないから、これを頑張らないといけないなとか、これはできたから、うん、良かったなということがわかる。自己認識を明確にさせて、次のステップは何をしなければいけないのかをわからせることが評価なんです。学力調査をすることを自己目的化してはいけないのです。

▲このページのトップに戻る

幼児教育研究分野
教育情報研究分野
能力開発研究分野
文教政策研究分野
発達支援研究分野