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研究分野:教育情報研究分野

シリーズ「教育大変動」を語る

第11回

児童の学力を左右する「社会的背景」とは?

「学力」を「社会的背景」と結びつけることの意義
古川:
 先生は、「青少年期から成人期への移行についての追跡的研究」の一貫として、青少年の学力・能力、進路・職業生活について児童・生徒および保護者に調査を行っておられますが、この調査の主旨は何でしょうか?
耳塚:
 学力を社会学的に捉える研究は、日本ではまだ非常に不十分な段階にあります。子どもの「学力、学歴、職業、社会的な地位」などを分析する上で、家庭的な背景や家庭の経済的文化的状況が大きな影響を与えているだろうということは以前から言われていたことです。しかし、どの要素が直接の影響を与えているのかを、きちんと把握していたわけではありません。

 今までは、子どもが認識している情報をとらえるという調査方法が一般的でした。ですから、例えば父母の学歴を正確に知らない子どももおり、ましてや家庭の所得や教育費支出についてはほとんどデータがありませんでした。

 これでは、子どもの学力を向上させるにはどういう支援が重要なのかを、きちんとしたデータに基づいて議論することはできません。
古川:
 調査方法は?
耳塚:
 小学3年生と6年生、中学3年生と高校3年生に対し、質問紙調査および国語と算数・数学の学力調査を行いました。さらに保護者調査を行い、今回はまだ発表しておりませんが、担任教員調査および地域にもヒアリングを行っております。
古川:
 今回この調査をもとに、学力と家庭経済の関係について分析し、発表されていますが、学力調査ではどのような問題を出されていますか?
耳塚:
 今回この調査をもとに、学力と家庭経済の関係について分析し、発表されていますが、学力調査ではどのような問題を出されていますか?
古川:
 学力と経済的な背景についてはあらかじめ仮説のようなものは立てられたのでしょうか?
耳塚:
 別の調査(中川さおり「誰が医者になるのか医学部入試における選抜システムと文化的再生産について」)によれば、1980年代には医学部に合格者を輩出している高校の8割以上が公立高校でしたが、2000年以降は83.3%が私立中高一貫校になってしまいました。高い学力を要求される医学部へ進学させるために私立校へ通わせるとなれば、ある程度以上の世帯所得が必要です。こうしたデータから、家庭の経済的な差による学力格差は拡大傾向にあるということは推測していました。

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