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研究分野:教育情報研究分野

シリーズ「教育大変動」を語る

第12回

能動的に学習する授業と教師のフォローが学力の高い子どもを作る!

「確かめる」「発表する」、能動的な授業は学力を向上させる
古川:
 いま学校の現場では、TT(チームティーチング)や少人数学習、朝読書の実施など、さまざまな学力向上への取組みが行われています。しかし、それらに対する実証的な研究はあまり行われていないようですが?
山崎:
 児童生徒の個人情報保護との兼ね合いもあって、最近は学力とその他の要素を結びつける研究はあまり行われてきませんでした。しかし学力の低下は大きな問題となっています。そこでこの調査では、授業方法や学級編成といった学校要因と、家庭学習や生活習慣などの家庭要因が、学力に対してどのような影響を与えているかを調査しました。
古川:
 今回は特に授業方法と学力の関係について、先生が分析されたところを伺いたいと思います。
山崎:
 授業方法については質問項目が16あります。各グラフ(下記)は、授業方法と学力の間の関係を示しています。 グラフの縦軸の数値は、授業方法のそれぞれの要素に「ほとんどない」~「よくある」と答えた児童生徒の国語と算数(数学)のテストの総合偏差値で、平均が100になるようにしてあります。

グラフ1~4
古川:
 では、グラフ1「先生が1時間中説明し、生徒が聞いている」からご説明いただけますか。
山崎:
 私たちが「一方向的な授業」と呼んでいるこの授業スタイルを受けている学級の子どもの学力は、小学生も中学生も、そのような授業を受けていない学級の子どもより低いですね。特に小学校においてその傾向が明らかです。
古川:
 こうした児童生徒が受身になる授業方法は学力の向上にあまり効果がないということですね?
山崎:
 はい。むしろ逆効果だと言えます。それに対して、グラフ2の「先生が生徒によく質問し、生徒がよく発表する」という能動的な授業の場合は、小中学校とも学力が上昇する傾向にあります。
同様にグラフ3の「算数や数学の問題を解いて、みんなの前で説明する」や、グラフ4の「理科の授業で、実験器具を使って生徒が実験する」など、能動的な授業を受けている子どもと受けていない子どもでは、明らかな学力差があります。
児童や生徒自らが説明や実験を行うような、積極的に参加していく授業をたくさん受けた子どものほうが、学力は高いということですね。
古川:
 このような授業の何が、学力を引き上げる要素になっているとお考えですか?
山崎:
 よくフィードバックといいますが、授業をして評価を行い、改善に活かすこと。講義調の授業だけでなく、教えた後に演習(解説や実験など)を子どもたちにやらせてみて、できないところは指導する、そういうサイクルが必要だということではないでしょうか。
●調査方法とグラフの凡例
時期:
2005年11月~2006年冬
対象:
北海道、広島県、島根県、沖縄県の公立小学校の5年生、公立中学校の2年生(回答数3,384名)
方法:
「少人数学習・TTと家庭での学習に関する児童生徒調査」調査票を配布。このなかで10分間の国語および算数/数学の基礎的な問題を使った学力測定を実施。

各グラフは「授業方法」の各質問項目と「学力」の2つの間の関係を示す。縦軸は、横軸の項目に該当すると答えた児童生徒の、国語と算数(数学)の総合偏差値の平均で、100が調査を受けた全児童/生徒の平均となる。
■ は小学生、 は中学生の値

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