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研究分野:教育情報研究分野

シリーズ「教育大変動」を語る

第10回

教員のストレスは、残業減では解決しない!

安全衛生の見地からの提言

●安全衛生の見地からの提言
教職員の健康対策のための提言:
  • 労働基準法の規定どおりの勤務時間に!
  • 教育本務のとりくみに集中できる体制に!
  • 健康を害さないための予防対策を講じよう!
  • 安全衛生活動を実践しよう!
  • 休息・休憩を確保しよう!
  • 場の意見を反映した教育政策を!
  • 教育は社会全体で行うもの!
古川:
 病気休職者の中で精神疾患による休職者の割合ですが、文部科学省の調査によると、1980年代は20~30%に止まっていましたが、90年代に上昇、2000年に50%、今回の調査では56.4%になりました。原因として考えられること、また学校の取り組みとして欠けていると考えられることはありますか?
酒井:
 産業界全体で見ても、精神疾患にかかる人は増えており、その対策は企業の課題となっています。教育の現場について言えることは、多様な問題を抱える学校という組織が、産業界では当たり前となった安全保健活動や対策に学び、いわば大人の対応をするような組織になっているのかどうか、検証する必要があるということです。
酒井一博 私たちは、今回の調査から、七つの提言を行っています(上欄参照)。企業にとって従業員の健康配慮義務があるのは当たり前のことです。

 先生方は「管理」という言葉に抵抗があるようですが、学校が従業員である教員の健康を守るためにどうやって組織的に運営していくのか、最近で言えば安全衛生マネジメントシステムの活用ですが、そうした国際的にも認められている方策に理解がないのは不思議なことです。

 例えば、労働安全衛生法という法律がありますが、そこで決められている産業医が雇用されていますか?安全衛生委員会は組織されて機能していますか?と教員に聞いても、そのような仕組みがあること自体を「知らない」という回答が2分の1を占めている。そういうことを知って活用することは、大事な職業技術のひとつではないかと思います。

 子どもの元気を真正面から受けとめるためにも、まず先生が元気でなければなりません。地域の子どもたちというのは、地域の工場やオフィスに勤めている人たちの家族です。産業界の人たちはどうやって安全と健康を維持しながら優れた製品や情報を産み出しているのか、この職業技術を学校現場でもシェアし、コラボレーションすべきではないでしょうか?
古川:
 今、教育改革について国政の場でも大きくとりあげられていますが、そういった中での今回の調査の意義は?
酒井:
 この調査は教育改革のための情報作りを想定して行なったものではありません。ただ少なくとも教員が、今どういう環境の下で仕事をしていて、そのことがストレスとどう関わっているか、それをデータに基づいて分析したことは十分に意義があると考えています。

 希望を言えば、改革の議論を進める中で、現場の声を整理したものとして、今回の調査をぜひ見ていただき、それを議論の中に取り入れてもらえれば、これ以上嬉しいことはないな、やった甲斐があったかなと思います。

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