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研究分野:教育情報研究分野

シリーズ「教育大変動」を語る

第1回

「義務教育国庫負担金はどう審議されたか?」

本当に義務教育国庫負担金は地方の自由を奪っているか?
古川:
 義務教育特別部会に参加した地方6団体の委員は一貫して、義務教育国庫負担金が税源移譲されれば、地方の教育の自由度が増し独自の施策を講ずることができる、と主張しました。
藤田:
 それは、根拠のない危険な主張です。義務教育費国庫負担金は教員給与を負担するものですが、そもそも教員人事権を持っているのは教育委員会であって、文科省ではありません、また、地方の自由度が増すといっても、教員の人件費を減らす自由、教育以外の他の費用に転用する自由が増えるだけだからです。ですから、教育行政が首長や一般行政の意向に左右され、不安定になる危険性が高まります。

 すでに同負担金は総額裁量制になっていますから、それはむしろ、地方のさまざまな改革・改善の努力を財政的に支える基盤になっていると言えます。実際、例えば少人数学級を実施している地方の7割は、義務教育国庫負担金の総額裁量制を利用して行っているのであって、地方自治体の自前のお金でやっているわけではありません。
図1 中央教育審議会 義務教育に関する検討体制
古川:
 義務教育国庫負担金を廃止し税源移譲した場合、40府県で財源不足が生じるというデータが文科省から示されています。地方の総額裁量制になると教育格差が起こるというのが多くの委員の意見でした。
藤田:
 地方の財政規模は、少子高齢化への対応、住民サービスの向上、地域社会の活性化などが重要課題となっている時代にあって、今後とも増大することはあっても、減ることはないと言えます。ところが、税源移譲されても、地域間の財政力格差がなくなるわけではありませんから、財政力の弱い自治体ほど、そのための財源確保が難しくなります。

 そうなると、どこかの予算を削ることになりますが、教育予算は、削減の影響が一見わかりにくく、しかも家計負担に転嫁しやすいだけに、削減対象にされかねません。実際、三位一体改革の発端は国家財政の赤字削減にあったわけですが、義務教育費国庫負担金がその生け贄にされようとしていることを見ても、それは明らかでしょう。

 そのようなわけで、私は、国庫負担金は堅持し、総額裁量制を拡充していくというのがいいと考えています。その点で、今回の答申は、私の考えに合致するものでしたし、地方六団体選出の委員3名を除く大多数の委員の総意でもあったと思います。

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